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1月16日
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ウンベルト・エーコの「美の歴史」「醜の歴史」を興味深く読んで(眺めて)います。

ウンベルト・エーコはショーン・コネリーが主役を演じた映画「薔薇の名前」の原作や「フーコーの振り子」など、知的な文章を書く哲学者・小説家ですが、

最近は、美学史ともいうべきジャンルで自説を展開していて、その土俵の広さに感服します。

現在の私は、紹介文を書くには程遠い読解レベル(ほとんど眺めているだけ)ではありますが、いわゆる日本人が書いた西洋美術史のように

名画の時代別羅列とその背景説明といった切り口ではなく、西洋の人々が“美”をどのように捉え探求してきたか、という視点のひとつの形として

新たな概念を展開しつつ、関連する様々な興味深い図版を(しばしば部分で)紹介してくれているのを楽しんでいます。

例えば初期において、いかに秩序を見出し、比例を組みあげることが“美”の探究であったか、という視点は、私が自分の絵の表現を探す過程と

奇妙に一致します。しかし秩序性・比例は重要ですが、それだけでは硬く観念的な表現になってしまいやすい(中世の絵の多くがそうであるように)ことも、

読んでいて(自分では曖昧模糊としていた感じの事柄を)眼から鱗がおちるよう感じました。

日本の美術史においては、そうした比例の探求は行われず、もっぱら情感や装飾性が求められたこととの文化的対比も(私の中で)浮き上がってきます。

 

しかし、20代の頃と違って、概念の理解の変容が絵の創作前の必然とは思えなくなっているためか、ただ単に新たな学習能力が低下しているのか、

何が何でもこの本の言わんことを理解しなくては、とは思えなくなっていて、なかなか文字が頭に入ってきませんが、

世界や対象など物事の捉え方がカチコチに固まりつつある私の脳みそに、少しずつ上質な刺激を与えてくれる本であることには間違いなく、常に

手元において、折あるごとにめくっては美術の変容について、ひいては人の感性の変容についての私の考えを、組み直していきたいと思わせてくれます。